神経質(ナーヴァス)に手を洗ふがにやや強き風に新樹はゆれやまざりき


マスクせし女神ネメシス満員の車輌に愛(は)しき咳ひとつしぬ


念入りにうがひをしたり上を向くかほ大山椒魚(はんざき)の貌となるまで


ぎちぎちに文字の詰まれるこそ良けれ太宰治新潮文庫


北上書房で『新樹の言葉』購ひて斜陽館めざしし二十四の頃


斜陽館にひとり泊まりし七月の < わかさ、かくて、日に虫食はれゆき、>


水無月の雨は意地酒 百歳(ももとせ)の津島修治が酔ひどれてをり  伊波虎英