天上より降りくるものを待つごとく屋上駐車場にくるまは集ふ  松野欣幸



筍とわかめ煮ふくめ寂し寂しもう歌詠まぬと言ひし人ゐて  小出千歳



起き出でてふかく息する二度三度きのうの続きとならぬまじない  越田慶子



ドードーを食ひつくしたる動物は棍棒といふ道具を持てり  矢嶋博士



合はせつつ過ぎゆく平安 結び目を解くふろしきに四隅角あり  上杉諒子



きのふにそのままつづく今日にして脱ぎつぱなしの靴履きて来つ  中島敦子



還俗せし祖先のありて水の面に映るわが身の揺らぎやまずも  三島麻亜子



日高屋を出でしより十数歩来て歯間の葱は地へ還りゆく  斎藤寛



雲を見る手持無沙汰の外野手はあやうく詩人になるとこだった  久保寛容