明日を死ぬ人らに夜ごとほほ笑みて鬼面の瓦ひび割れてゆく


黄葉に肥(ふと)る鴨脚樹のかがやけるさまに男をあざむく女


二十年前のティッシュに包(くる)まれてコンクリ片ありベルリンの壁


ベルリンの壁の欠片をひとつ入れ白く濁れるフィルムケース


よぢ上りしベルリンの壁下りるとき壁の高さを思ひ知らされき


レシートを手に丸めれば蠢けりかつてザムザでありし甲虫(かふちゆう)


魂の重みのごとくレシートに数字と文字は印されてをり  伊波虎英