◆ 「短歌人」二〇〇九年の十首  伊波虎英


 短歌商業誌では、年末に年鑑を出したり特集を組んで、その年
の歌壇を総括するのが恒例である。結社誌である「短歌人」にも、
同じような企画があってもいいのではないだろうか。以前から、
編集委員各氏による<「短歌人」秀歌選>のページが半年ごとに
でもあればいいなと思っていたのだが、<「短歌人」今年の十首>
として一年を総括する形で実現できないものだろうか。


 一年間に掲載されたすべての作品から会員・同人に関係なく、
また「作品月評」欄のような平等性を一切考慮せずに編集委員
氏が選んだ、まさに今年の「短歌人」を代表する作品の数々と作
品評。これなら、ふだん自分の掲載作品をチェックするくらいで、
あまり他人の作品を読むことのない会員・同人も興味を持って読
むはずだし、各人の今後の作歌の上でも大いにプラスとなるにち
がいない。さらには、結社外へ「短歌人」をアピールするという
点でも非常に効果的で意義のある企画になると思う。


 誌面のページ数増によるコストの問題(「短歌人」の公式サイ
トを活用するのもひとつの手だ。)や、何と言っても編集委員
負担増、等々実現へ向けたハードルは高いだろうが、ぜひ一度検
討してみていただきたい。


 好き勝手言ったので、最後に僕自身の<「短歌人」二〇〇九年
の十首>の内いくつかを、紙幅の許すかぎり紹介しておこう。


  今からはもう染まらない今からじゃ染みは落ちない中年は布  谷村はるか(四月号)
  花かごの把手のごとき虹の下一村落はかがやきにけり  三井ゆき(七月号)
  ゆくみちに日の斑ゆれをりヨーデルのうらごゑあまたかさなるやうな  紺野裕子(十二月号)