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その畑はマネキンの首並ぶ畑まばたきをせぬ眼ならぶ畑 磊実
円心を同じうしたる弟の狂はむとするかすかな波動 有沢螢
右目にはまだ覗かせたことのない万華鏡のなかの世界を 魚住めぐむ
仮想する巨体の敵に対峙してひたすらに蹴る夕陽の少年 久保寛容
渡り鳥を空に一人の母を庭に見てわが一日をガレージより発つ 久保寛容
昨夜のこと寂しい人が通りたりプランター蹴り花を踏みつけ 竹浦道子
風の日に海のにほひのすることを犬には告げて武蔵野も冬 大越泉
子を産みしことのなき身は雨上がりの土のにほひなどしてゐないだらう 大越泉
深々と天皇陛下にお辞儀するバラク・オバマは戦後の生まれ 松木秀
笑ったらたぶん遺影にされそうで笑った顔の写真は撮らず 松木秀
あらかたを昭和の御代に生き越しと暦かけかへながら思へり 池田弓子
行かなくちゃ、行かなくてはと陽水は切なくうたう時雨の午後に 宮本田鶴子
(2010.3.1.記)