とぐろ巻く蛇の頭をつかむごと受話器を握り父に電話す 鳴瀬きら
三年も探されている猫がいる今度は猫で生まれてきたい 鳴瀬きら
雪は雪を 母は私を 私は母を 生んでしまつて<しまつた>と言ふ 田宮ちづ子
七十の女が脂肪吸引に死せるを思ふ夕風の中 みろみ
年明けてめでたき事のひとつ目はわが息しろく強きことなる 薄葉茂
我よりも初めて先に寝し妻の体のかたちに津軽富士おぼゆ 薄葉茂
わたくしと病臥の母をつなぐためポケットラジオ二台を買いぬ 平田栄一
くりかへし父の語りしおもひでが私自身の記憶となりぬ 山根洋子
負け犬の遠吠えにどこか似ているか零時をすぎて除夜の鐘きく 今井ゆきこ