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LEDライトのひとつひとつには凍蝶一頭仕込まれており 生沼義朗
富士の肩に風湧き起こりきのふ人の死にたるあたり硝子光(くわう)せる 酒井佑子
「おーい、おいでよ」「はーい、おいだよ」ほのぼのと言葉の生るるある日のあした 本多稜
ぢいぢいがしにませんやうに満月に祈れる声を確かに聞きぬ 中地俊夫
詩人にも虎にもなれず生きのびる我に寅年めぐり来たれど 藤原龍一郎
はちみつ色の猫になつかれ抱きあぐる抱きていとしむもの持たず来し 蒔田さくら子
ゆふやみの非常階段。のぼりよりくだりのはうが踏む音ひびく 宇田川寛之
ピラカンサ喰べ尽したるひよどりの命の色は赤くあるらん 佐藤慶子
ピアノにて両手で弾ける唯一の「たき火」のなかに山茶花は咲く 岩下静香
しづかにしわれの居るときかたはらにこの世の猫はひとつこゑ挙(あ)ぐ 小池光