カラヴァッジオが描きたるごと一房のバナナにうかぶ斑点の黒シュガースポット


さりげなく消臭剤の置かれたる開架式書架 雨の匂ひす


数へたことなけれど常にゐるといふホームレスのひと四十人は


当館では天使の羽をもぐやうな音で新聞めくるべからず


ぎつちりと餡の詰まつたあんぱんのどつしり重き夕闇は来ぬ


あふ向けに眼(まなこ)ふたげば神実(かむざね)のごとくにしろく立つ真夜の滝


死者たちが代はりばんこに生者らをとつとつ語る雨だれの音  伊波虎英