冷たさが首に沈んだそのあとに雪解けのように春めく真珠  黒崎聡美



西日差す書棚にありて触れられぬ歌集のごとき姉の独り身  太田賢士朗



陽を浴びてあたたまりたる毛糸玉その温もりを編みこんでいく  伊藤直子



叩かるるたびに大きくうべなひて笑顔絶やさぬペコちやん人形  海野雪



舌の上でスタッカートを奏でてたファンタ飲まなくなって何年  今井ゆきこ



三内の縄文人の末裔(すえ)ならん棟方志功も父もまた吾(あ)も  伊東一如



飛ぶことも地球を救うこともなく今は毎日大人をしてる  工藤足知



なんとなく信用できぬ人なりき二度の盗作立松和平  さつき明紫