大き顔むだに広げる黄蜀葵よく似た女をひとり知ってる  大橋麻衣子



ひとりゆえ親しむこころジャンパーのナイロン生地の擦るる音にも  西川才象



祭壇の遺影はデジタルフォトにしてつぎつぎ変はる大叔母の顔  洞口千恵



ゴキブリを叩いて潰す母親と掃除機で吸う妻の語らい  森直幹



ひとびとが女人と決めている山のその寝姿のうえを雲ゆく  久保寛容



ひとつづつ合鍵もちて子ら出入るこの家にひとり老いてゆくなり  野久尾清子



苺はねぇ「七郎兵衛」と言えばよい 一世の祖母は教えたまいき  川口かよ子