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ちつぽけでつまらぬものに一歩づつ近付いてゆく今日を送れり 牛尾誠三
五本指ソックスに指ひとつひとつ入れやるときにわが身はいとし 黒河内美知子
君からのメール届けばポケットの中にて跳ねる一匹の鮎 太田賢士朗
幸ひと思ふひとひの陰影を白きかぶらの曲線に見つ 松村威
ゆるらかにバスは来にけり春の日の睡眠協会前停留所 芦田一子
なまぬるき雨が降り出しはつなつの工事現場に鉄骨匂う 有朋さやか
水飲めばペットボトルに透ける木々揺らめくように街は深海 立原みどり
けふ出汁をとりし煮干は大口をひらきしままに固まりてをり 來宮有人
見も知らぬ人の流した排水が二階の壁の中より聞こゆ 佐藤悠子
「どちらでも良いわよ」と云ひ良くはない顔してゐるだらう私は 青木みよ
そんなもん迷ってた日にゃ腐っちまあな八百屋のオヤジに人生説かれ 川前明
母の日に感謝のことば言えなくてこの場をかりて伝える思い 上村駿介
わざわざに歴女、仏女と言うならば美術好きなら美女と言うべし 籠房代