わが臍はここにあるぞと大空を仰ぎて今朝も深呼吸する  小野さよ子



待ちに待ちしわが生命保険の祝ひ金塗料となりて屋根かがやかす  岩崎堯子



ありがとうさよならまたねそんなとき若葉が背中に生えくる痛み  今井ゆきこ



石段を地蔵の影が這い登る 登りきれずにいつも夕暮れ  川前明



午後三時立て看板の人の名を変へて去りゆく葬儀屋の人  横倉勝一



油ゑのぐ頭蓋骨からはみ出してカンバス叩くジミー大西  松村威