換気扇まわせば聞こゆ 北へ行き北よりかえる夜汽車の汽笛 有朋さやか
ポケットのなかより出でし貝殻は我が掌にもろくくずれる 太田賢士朗
どしゃ降りはきみを眠らせこの部屋を小舟のように頼りなくする 黒崎聡美
「撮り鉄」が雀の如く一列に並びし畦は雨にぬかるも 平田栄一
炎天のトーキョーゆけば口紅とともにわたしも溶けてしまへり 山田政代
コンビニの裏に駐まれるトラックの運転席に足のみ見ゆる 小林惠四郎
尖りたる氷がちょっと解け始むそんな年頃不惑の友は 石川普子
城壁のなかに建ちいる教会の鐘鳴り渡り光さしくる 榊鶏司
ドトールゆミニスカートのをとめらを見飽きたるころ驟雨降り来ぬ 坂本野原