樹の翳を揺らして風は過ぎゆきぬ文字のなき世の言葉のごとく  洞口千恵



コンビニに購ひ書けばわが名前ペン先ゆ滲みゆく香典袋  佐藤大



ぼくに子の無いことを知る図書館の吏員に『赤毛のアン』を差し出す  久保寛容



押してあるいて止まってすわるおばあちゃんが小春日和にあふれているの  斉藤斎藤



きみが好き きみもいちばんきみが好き ふたりでゐてもあまるわたくし  真狩浪子