DIES IRAE (3) 伊波虎英
現し世は永久(とは)に未来のなき死者の置き忘れたるビニールの傘
賀状といふ矩形の月に野兎を閉ぢ込めながら新年を待つ
『ノルウェイの森』赤/緑(ふたいろ)の二十余年書棚にあるが哀しくなりぬ
ひやくはちの鐘鳴る寺にひやくはちの蛇(じや)の脱け殻のちらばるが見ゆ
ひやくはちの蛇(じや)はうねくりてあらたまの闇夜をやがて丸呑みしたる
元日の朝を西湖のクニマスは心安らに迎へたらうか
元朝を神の吐血の乾(ひ)るごとくポインセチアのくれなゐ翳る
太くみじかく生きたいなどと思ほえば日毎に髪は細くなりゆく