ヒトは死ぬまで人間と限らぬが犬は死ぬまで犬をつづける  松木



リビングに西日があふれ座蒲団の一つに大きな母性が宿る  滝田恵水



親指に小さき沼をもつわれか日ごと夜ごとに生れくる水泡  洞口千恵



由布岳に雪つもるとふ山鳩のやうな電話の弟のこゑ  稲吉佳子



冬の薔薇くれないのつぼみ掲げおり母はその母忘ること無き  会田美奈子



人のために悲しむ人へ冬空は広げて贈る青の中の青  谷村はるか



祈るたびにちがう名前をつけていたような気がする神様を呼ぶ  斉藤斎藤



仰向けに置かれた眼鏡無防備に恥部を晒しているかのごとし  森直幹



列島の明日の空を支配せり天女のような気象予報士  若尾美智子