原子力発電所崩(く)ゆ終末のむかうの未来かがやかせつつ  菊池孝彦



傷ふかくながく苦しむ原発は吾が産みし子のひとりなるべし  吉岡馨



航空写真原発のはだか我に見すさびしかりけり日本といふは  田上起一郎



立ち上がることはおそらく無理だらう平成の代に日本ほろぶ  田中浩



「日本が亡びるとき」は「日本語が亡びるとき」の誤植なりとぞ  諏訪部仁



原子力すなわち「地上の太陽」ともてはやされた日々霞みたり  村田馨



教え子の幾人係わりいることか原発事故の会見を見る  長谷川富市



ただちには直(ぢか)にはすぐには即座には「影響なし」と言つてのけるか  大滝世喜



原発の「ぱつ」の発音くちびるに破裂せしとき唾飛散せり  菊池孝彦



福耳を持ちたる官房長官のやつれ具合が画面に滲む  村田馨



「後悔」がもっとも近いかもしれぬ原発事故ののちの思いに  若尾美智子



原発が怖いと妻も子も逃げてひとり日本に取り残されぬ  中地俊夫



原発地震の現実(うつつ)逃れいで五曲までを聴くちあきなおみを  田上起一郎



西に避難してくるひとの有りと聞きそれに値する場所かと思う  津和歌子



原発の事故とふ空につながれるこの青き空よ東京は晴  北村鈴枝