2011-07-01 ■ 短歌人(月例作品) 短歌 くぐつしとまぢよ 伊波虎英 義眼からあふれてやまぬ泥水をぬぐつてやれぬ傀儡師、神は 願はくは見よ、人形義眼(ドール・アイ) その青き瞳でわれに見えないものを 「運命に逆らはないで」さくら花こぼるるほどの小声で魔女は きだはしを上るがごとく死ぬ人と下るがごとく死ぬ人のあり ほの白き耳ひらひらと漂ひて闇夜に死者のこゑを聞きゐむ イヤホンはわが両耳の紲(きづな)なり眠りゐるときはぐれるなゆめ 穢れし世なればなほさら上澄みは美しからむ夜のしじまに ひとときの天才の名をほしいまま無邪気に笑ふ子役の少女