くぐつしとまぢよ  伊波虎英


義眼からあふれてやまぬ泥水をぬぐつてやれぬ傀儡師、神は


願はくは見よ、人形義眼(ドール・アイ) その青き瞳でわれに見えないものを


「運命に逆らはないで」さくら花こぼるるほどの小声で魔女は


きだはしを上るがごとく死ぬ人と下るがごとく死ぬ人のあり


ほの白き耳ひらひらと漂ひて闇夜に死者のこゑを聞きゐむ


イヤホンはわが両耳の紲(きづな)なり眠りゐるときはぐれるなゆめ


穢れし世なればなほさら上澄みは美しからむ夜のしじまに


ひとときの天才の名をほしいまま無邪気に笑ふ子役の少女