2011-08-01 ■ 短歌人(月例作品) 短歌 青空を恋ふ 伊波虎英 ひとり来し梅雨入り近きバラ園の曇天のした目薬をさす 「正常です」と言ひし女がわが部屋の柱の釘にぶらさがりゐつ 炎色の花村萬月『裂』が載る机上をじつと見つめる女 「火事です、火事です」と叫ぶそのときを眼(まなこ)みひらき女は待てり 「遠くへと飛んでゆきたい」錆びついた蝶つがひ鳴る悲しい音で 開き戸の金具まじまじ見てをれば雌雄同体の凍て蝶となる 潤滑剤吹きつけやれば蝶つがひ静かにはねを閉ぢては広ぐ アフリカにあたらしき国うまれるといふ七月の青空を恋ふ