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日常は些細なものに支えられ商店街のニセモノの花 天野慶
引くことを知らぬ少女の傘のなかおかっぱ調の正論をきく 有朋さやか
「世の中はあなたのために出来てない」他人が言えば臓腑にしみる 生野檀
天井や壁に亀裂を走らせて今はみずから伸びる地下街 猪幸絵
酔っぱらいがしきりに手すりに体当たりするのは気持ちよいからだろう 生沼義朗
横断歩道を急ぐ目のはし柄の取れたモップのようなあれは犬の死 大橋麻衣子
受信したメールは鳩の絵のついた缶にしまって時々見たい 梶原治美
真夜中のガードレールにそえられた白百合燃える赤信号に 木嶋章夫
ダンボールで塞いだ窓の前に立ちそれから後の日常にいる 黒崎聡美
タワーマンションの窓から反射して偽の朝日は路地によろぼふ 勺禰子
わたしいつもこうだからもういいからみたく折り畳まれていくパイプ椅子 砺波湊
個人的には寝ていただけのおほやけには働きづめの四月はすぎる 花笠海月
菜の花の揺るるさまにて眠りゐる路面電車のひとつらのひと 春野りりん
団地妻もののポルノのありしころ団地に若き人多かりき 松木秀