自販機のひかりのなかにうつくしく煙草がならぶこのうえもなく  内山晶太



シャッターの目立つ駅前商店街 虚ろな眼をした鯛焼き並ぶ  森直幹



それぞれの抱ける闇にともされし線香花火の火の玉見つむ  下村由美子



語りては元にもどりて繰り返すオルゴールに似る母娘の会話  東海林文子



オジサンの遺してくれし遺言書 そのなか一字わが名間違う  小田倉良枝



ヘルメットの下にタオルをはさみたる僧がバイクで風切りて行く  宮本しゅん



湯上りの女児も小さな死を持ちて逃げるを追いぬタオルを広げ  山田幸


                                                    (2012.1.20.記)