Tシャツで殿下を迎へる瞬間がわが人生に用意されてた  菅野友紀



手動式鉛筆削りの存在が尊く見ゆるあほらし節電  斎藤典子



電力が足りなくなると言ううちに日本が多分なくなるだろう  若尾美智子



生き残る遊びせよとやうつせみの身に覚えなきこの罰げーむ  武藤ゆかり



福島の原発建屋が百年後世界遺産となりうる悪夢  照井夕佳詩



居酒屋に俄か作りの募金箱大方の客つり銭入れる  大矢信夫



忘れてはならない、ならないそう言って馴れてゆくのだ鶴を折りつつ  猪幸絵



以前・以後 しかし正しく一日は一日として子を歩かせる  猪幸絵



縛られてゐる感覚も絆かと三輪素麺の帯を解く指  西王燦



証言と検証つづく紙面には生者の声のあふるるばかり  洞口千恵



菅辞めろと皆が言う時おそらくは間違っている皆が言う事  川村健二



ひまわりの黄色の彼方無垢にして純粋にして八月の空  藤原龍一郎



                                                          (2012.1.20.記)