シャボンの玉  伊波虎英


原爆忌まぢかき真昼、乙女らの日傘は黒き雨傘となる


手を洗ふ無心なる時たまさかにシャボンの玉のひとつ生れたり


中年の昼寝危ふし目覚むれば剃刀の刃の錆びし臭ひす


水羊羹の喉ごしのごとやり過ごす日常の先に晩年が見ゆ


仰向けに転がりてゐる熊蟬の夢の中なる木陰に憩ふ


虫捕りの網のあまたの目に追はれ茜とんぼのたましひ冱ゆる


吹きすさぶ二百十日の風なかにわが海賊旗はためかせゐつ


なでしこジャパンが戦ふさまを見てをれば永井真理子が聴きたくなりぬ