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たとえたら例はたくさんあがるけど、君の瞳は真っ直ぐ過ぎる 野栄悠樹
父の名をカタカナで書く女生徒の右耳たぶのピアスはハアト 桑原憂太郎
ハンカチを口にくはへて手を洗ひその濡れた手でポケットさぐる 西尾正美
カツゼツの悪い車掌の放送で電車動かぬ理由わからず 野上卓
老いのわが手を包むごとコンビニのこの子は釣り銭わたしてくれぬ 水島修
破れ目にガムテープ貼る椅子に掛け舐(ねぶ)る噂のソフトクリーム 佐藤由美
朝食べて夜も飽きない烏賊刺しも函館暮しもすっかり馴染む 上野節子
みどり子は脂(あぶら)にまみれ滑り落つこの穢れたる邦を選びて 太田賢士朗
(2012.1.24.記)