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まつ黄色に家を塗りたる人のこころ知らざるも道の案内に便利す 吉岡馨
わが視野に嬉々とあらはるる蚊のかげの濃きときのあり薄きときあり 小出千歳
死と生のあはひにしばしたゆたひぬ蚊帳のなかにて目覚むる朝は 関口博美
ながく触れぬ琉球三線かき鳴らすしばし泥みづ吐くやうな音 関口博美
雨傘を携えて母が待ちくれしふる里の駅は疾うに消えたり 安藤厚子
不条理な叱り方だと途中から気付く着地点探しあぐねて 河村奈美江
敷きつめし貝殻のごと光りつつ難波は生駒の山裾に寄す 春野りりん
大ウソの文字もじどほり踊りゐて夕刊フジは筒状に伸びる 勺禰子
「相田みつをが好きだよ」なんて言うから首相 胡散臭いと思えてしまう 山本照子
(2012.1.24.記)