おはぎ  伊波虎英


「御座候」の餡買ひ来たりたんまりとおはぎを作つてくるる母ゐて


コンソメのスープ飲みつつお彼岸のおはぎ五つを昼餉としたり


吟遊詩人(トルバドゥール)となりて去りゆくわが影にわかれを告ぐる秋の夕暮れ


やや硬くなりしおはぎをきつねうどん啜りて食す今日の夕餉に


仏壇に供へしおはぎのいつまでも柔きままなる世界をおもふ


この秋の夜長にちやうど良く『神は妄想である』の分厚きを読む


挽歌集に垂るる紫紺の栞ひも夜のひとりの部屋に伸びゆく


いつぽんの白髪ふるへてくしやみせし秋冷の朝の布団より出づ