くりの実を甘く煮ており三十の鬼皮剥きしわがゆびのため  高木律



足先をそろりブーツにとほしゆき直立二足歩行の覚悟  関口博美



双眼鏡の視界のなかに閉ぢ籠もりしばしかもめの群を見てゐる  大室ゆらぎ



細やかなこころなるべしとび発てば鷺の二の脚虚空に揃ふ  柘植周子



両脚を踏ん張り正しく太鼓打つ幼児の眸ひかりを放つ  さとうひろこ



リアス式海岸に似る足指をねんごろに洗ふ地震より七月(ななつき)  春野りりん



ショッピングモールから伸びた新しい道路わきにも彼岸花咲く  黒崎聡美