暗がりに信号をまつ人影のそのちひさきがあはれわが妻  伊東一如



シルバーの派遣に頼り小屋一つ壊して雪の心配なくす  小松志津



戦争を煽りしあの日の新聞と名前変わらぬ今朝の新聞  野上卓



母親となりたる姉妹陽だまりに語り合うのを見るはうれしも  新倉幸子



無差別に酸性雨ふる右むきに死にたる犬の舌の裏まで  有朋さやか



真夜中の静かな町のマンホールのふたの中より水音ひびく  藤間明世



ちからこぶを作り鏡を睨むなりMRIの検査室前  米山和明



タコ足の導線かぶりて踊らんか一つの検査苦痛などなし  佐々木幸子



自律する神経が自律しなくなる「もの」をかかへて日々を生きをり  牛尾誠三



あやまんはJAPANを名のるべからずと右翼の言ふも尤もならむ  坂本野原



「不細工な方が次郎」と頂きし富有と次郎、次郎がうまし  田端洋子



仙台の友の絵手紙「漸くに落ち着きました」とハマギクひらく  斉藤満喜栄