五月の風よ  伊波虎英


春眠や、行きか帰りか知らねども亀の甲羅にまたがり候


みそ汁の半熟卵をつぶさぬやう茶わんの飯のうへにのせたり


つぶさぬやうのせた卵の半熟をましろき飯のうへでつぶしぬ


人間が造りしものを破壊する神が創るを破壊する人


神々が創りしものを破壊する人が造るを破壊する神


霊園のごとき地球に墓のなき国ありて吹く五月の風よ


『言語にとつて美とはなにか』を入り口に短歌はじめし人の羨しも


目じりから目がしらまでを測る人あまたゐむ『うたの人物記』読みて