薄荷緑の歯ブラシ  伊波虎英


養殖のうなぎが餌を喰ふところ見てよりうなぎ苦手となりぬ


花火とは花の火ならず然はあれどアンダルシアのひまはり畑


あたらしきミントグリーンの歯ブラシをおろす寝苦しき夜を越えきて


歯ブラシの刷子にさへも彩色をほどこす無駄を愛するわれら


歯ブラシの柄の彩色が用なさぬ独り暮らしをふと恐れたり


ぴよぴよと横断歩道のうへで鳴く瀕死の鳥を置き去りにする


信号が青、赤、青と変はるたび輪廻転生する鳥のこゑ


通り雨にひらけば傘は折りたたむまでの短き苦界を濡るる