2012-10-01 ■ 短歌人(月例作品) 短歌 薄荷緑の歯ブラシ 伊波虎英 養殖のうなぎが餌を喰ふところ見てよりうなぎ苦手となりぬ 花火とは花の火ならず然はあれどアンダルシアのひまはり畑 あたらしきミントグリーンの歯ブラシをおろす寝苦しき夜を越えきて 歯ブラシの刷子にさへも彩色をほどこす無駄を愛するわれら 歯ブラシの柄の彩色が用なさぬ独り暮らしをふと恐れたり ぴよぴよと横断歩道のうへで鳴く瀕死の鳥を置き去りにする 信号が青、赤、青と変はるたび輪廻転生する鳥のこゑ 通り雨にひらけば傘は折りたたむまでの短き苦界を濡るる