秋の訪れ  伊波虎英


製菓場の跡地に埋まるエンゼルの墓碑として建つ分譲マンション


吃音の男児が ま、ま、ま、吃るたび ま、ま、ま、真つ赤な曼珠沙華揺れる


公園の鳩はついばむぽたぽたと老婆がこぼしゆける記憶を


ユニクロのチラシが秋の訪れを教へてくれる金曜の朝


便座カバーの下に隠れてゐる秋がわが両腿にそつと触れたり


「あまちやん」が終はるイチローのシーズンも 九月、宇宙は膨れつづけて


革婚式迎へしごとき気だるさに十月なれどゴーヤを食らふ


さやうなら林威助(リン・ウェイツゥ)さやうなら桧山進次郎さやうなら夏