冬の感傷  伊波虎英


氷上に揺れつつ灯るいつぽんの和蠟燭かな、ああ浅田真央


小学生の頃をしみじみ思ひだす朱川湊人の本にひたれば


車庫の上(へ)に共同物干し台ありき冬の真昼の満艦飾よ


洗濯物取り込まるればプロレスのリングとなりし物干し台は


「珈琲の青山」閉店せしことも時代の流れといへばそれまで


暇つぶしに点けしテレビに労働をつづけてゐたる芸人、俳優


揉み上げの長さが左右ちがへるは大衆理容ゆゑに許容の範囲


字余りのごとき左の揉み上げにかみそりの刃を当てて揃へき