折々のうた  伊波虎英


「茹で損なひの枝豆みたい」といふ比喩のいかにも江戸に居さうな男


片つ端から山本周五郎を読みかへす気力なきこと哀しみのひとつ


さ、くら、さく来世の花を天守より見おろしゐたる秀吉とわれ


生活が顔に出でたる美人にはなかなか会へぬ街を歩けど


生活が顔に出でたる美人にはオーラの要らぬ美しさあり


「よう草鞋作つたけれど忘れたわ」朝ドラを見て母はつぶやく


採集電車、回想バスが老い母の眠りの闇をゆるるりと発つ


たちまちに咲いて散りゆくこの春のさくらを見しか小保方さんは