鍵穴  伊波虎英


「目覚めよと呼ぶ声あり」のオルガンが礼拝堂へ誘(いざな)ひし三年


鍵穴のどこにもあらずポケットの鍵は小銭を穿たむと鳴る


大阪は神のすむ場所、吉本に桑原和男が元気なかぎり


わが首のうへのみ晒し理髪師は白雨のごとく白髪(しらが)を降らす


幼な児がちやぷちやぷ踏める水たまりじやぶじやぶじやぶと戦場になる


スポーツといふに人間の嫌(や)なところ露骨に見する球蹴り競技


体幹をすなはち胴を鍛へむと片足立ちでジャブをくりだす


女性とも直木賞作家とも知らず木内昇(のぼり)をたまさか知りぬ