神の寝息  伊波虎英


二学期がもうぢき始まる少年の自死へのカウントダウンが始まる


すれちがふとき傾きておのづから意思もつごとく傘は進みぬ


ひと恋し。火とぼし頃の戎橋、綾瀬はるかを見上げて渡る


<ひとつぶ300メートル>看板のランナー永遠(とは)に羽を持たざり


猛暑日のなきまま終はる八月の大阪を射るアジアの言葉


冗長にか細くひびく虫の音に冷たくひらく死者たちの耳


神さまの寝息のやうな虫の声とほく聞きつつ我も眠らむ


ひさびさに氷川きよしを見てをれば年相応にやつれてゐたり