2014-12-01 ■ 短歌人(月例作品) 短歌 秋のうた 伊波虎英 店先の新刊本にここちよき沈黙として文字は収まる どこからか香る金木犀ほどに存在感なき日本の力士 逸ノ城(イチンノロブ)が四股ふめば土俵に薫るモンゴルの風 モンゴルの大草原をまろびゆく風 ブロノンチイ、グヤホンタルア 戦力外通告受けし選手らの名が連なれる神ノ無キ月 キシリトールガムをひとつぶ秋の夜の寂しき口に放り込みたり 目薬の秋のしづくの冷たさを右の眼に受く左眼ののち 暗闇をものともせずに吹き荒れる風は睡魔をさらひてゆきぬ