秋のうた  伊波虎英


店先の新刊本にここちよき沈黙として文字は収まる


どこからか香る金木犀ほどに存在感なき日本の力士


逸ノ城(イチンノロブ)が四股ふめば土俵に薫るモンゴルの風


モンゴルの大草原をまろびゆく風 ブロノンチイ、グヤホンタルア


戦力外通告受けし選手らの名が連なれる神ノ無キ月


キシリトールガムをひとつぶ秋の夜の寂しき口に放り込みたり


目薬の秋のしづくの冷たさを右の眼に受く左眼ののち


暗闇をものともせずに吹き荒れる風は睡魔をさらひてゆきぬ