2015-05-01 ■ 短歌人(月例作品) 短歌 三月の耳 伊波虎英 松島アキラの「湖愁」流るるラジオにて母の青春よみがへる朝 一杯の水飲みて寝るならはしは朝のゆまりの爽快をよぶ 廃屋の解体されて後をなほ黒猫はゐて更地を統べる 放たれて花粉まみれの蝶は舞ふ可憐なくしやみ響く車内に 啓蟄の耳より洩るるかぎろひのブルース・スプリングスティーンの魂 春泥のごとき歌声ここちよく耳は喜ぶそのぬかるみを 春雨ぢや濡れて参らうとはならず眼鏡をかけて歩いてをれば 大相撲人気復活の兆しとは関はりはなく日々四股をふむ