2015-06-01 ■ 短歌人(月例作品) 短歌 桜のうた 伊波虎英 ひと年(とせ)をかけて桜は大いなる肺活量の呼吸ひとつす 春の日のへうめんちやうりよく満開の桜はおほき水の粒なり 花霞のむかうにぼんやり見えてゐるやうな気がした昭和の家族 白髪をもたぬ老木おそろしや萎るることなく散るさくらばな デモ隊のごとく連なる満開のさくら並木を風は排除す 美しき噓を笑顔でつく人にさくらは千の針として零(ふ)る 負けず嫌ひの「ず」が気になりて花冷えの夜の指をもて電子辞書ひく ビニールでくるまれて皆既月食の赤月とどく雨の朝(あした)に