警笛  伊波虎英


花紀京追悼特別番組に懐かしきひと映りては消ゆ


西瓜食めば祖母の思ほゆ病床に季節外れの西瓜を乞ひし


川蜷(かはにな)を腹の薬と食みてゐし祖母は胃がんで早死にしにき


濃き海のブルーの容器を見上げつつさす目薬の心地よきかな


こほろぎのか細く鳴くは警笛か夜の怖さを知らぬ子らへの


防犯の「防」のむなしきカメラには少年少女の最期の姿


風景の殺(そ)がれた街で野良猫がみる夢だけが夢なのだらう


助つ人が打たねば負ける情けなき球団なれどもわれは愛せり