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プリズムの断面にいるここちして夏至の陽の射す朝を歩めり 守谷茂泰
いつもいつもワインドアップの野茂のごと腋をさらして立ちたき銀河 高澤志帆
氷屋のくらきところにつつしみて切らるる時を待つおほごほり 花笠海月
ジル・ド・レの青き髯さへじりじりと焦がしてしまふ炎天の日よ 山科真白
「もういいかい」伸ばせる葛のつるの先「まあだだよ」とぞ方向(むき)かえてやる 立花みずき
夕暮れに水吐く壁を訪えば水吐くばかり恐ろしきかな 森澤真理
退屈で呼び出したあいつまつ白なブラウスだからスープカレーを 真狩浪子
ともかくも流れ作業の軍服を仕上げてわれの戦中をはる 原みち子
頭(づ)の奥にわけのわからぬ梅雨きのこ殖ゆる日の暮れ鬱へ傾く 春畑茜
ママチャリの前後に子供を乗せながら外国人が唄う君が代 廣西昌也
「高瀬舟」読みたしと母の言ひしよりぬめぬめと月はまなうらに輝る 杉山春代
トウシュウズに鍛へられたる一対の脚は伸びをり枇杷を採るため 佐々木通代
塗装夫の幅広ズボン花火なすペンキの付着はなやぎて見ゆ 神原僖美子