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日々ここに落ち葉掃くひと自らもふくろに入りしかけふは在(を)らざり 川合怜子
黄の落ち葉舗道(みち)にびつしり敷かれゐて怪しき影を曳く人が踏む 吉野加住子
まざまざと温き内臓もてるごと夕陽まみれのわが冷蔵庫 脇山千代子
荻ちりぬ 私がしたと言い出せず兄にかぶせし罪ひとつあり 後藤祐子
あおによし奈良美智の描く子ら黒豆の汁のひとみ光らす 砺波湊
とある夜月が二つに見えしこと誰にも告げず年を越しゆく 取違克子
冬瓜をスープに煮込む表面がほほゑむほどの火かげんにして 竹内タカミ
むきさしの蜜柑が置かれテーブルはいつもだれかを待ちつづけおり 朝生風子
この居間にこんな夜があつた 子らが揃ひ観るDVD「ドリフの全員集合」 小野さよ子
手にワイングラスを持ちて首の無きマネキン二体の聖夜しづけし 田村よしてる
生きとし生ける物は生きねばならぬ悲しくもほっこりなるまで里芋を煮る 榊原トシ子
関節は解体の折の目印と教えてくれた屠殺場TOKYO 小林尚生