飽きもせず外を見つめる猫の背の丸みがこころに刺さつて、弥生  藤田初枝



短歌(うた)をよむに上手な人は変人が多しと言ひてなぐさめてゐる  正藤義文



けだし桜はあはき花芽をふくらませ人の寂しさつゆぞ想はず  山本じゅんこ



除草剤蔵ひたる納屋春なればほの明るみて殺気かぐはし  松野欣幸



ふきのとうの白和(あ)え食べる早春の直なることばも香りに和(あ)えて  関根雅子



紅梅のたましひにほふ三月は巨き甕棺のなかなる眠り  洞口千恵



空堀に住みて今さらしたはしき蜘蛛手にみづのはしる大坂  梅田由紀子



海に臨む研究室に灯をともし 越喜来烏頭(おつきらいうたう)きみが生きる町  和田沙都子




                                                (2007.5.24.記)