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風羅坊 伊波虎英
軒先に狐火のごと有平棒(アルヘイばう)まはす理髪屋らしからぬ家(うち)
うるはしき声とよもして碧空に落ち穴をほる迦陵頻見ゆ
乳呑み児を < 赤ちやんポスト > に放るごと郵便ポストに歌稿を投ず
少年の九竅(きうけう)ゆ出でし風羅坊(ふうらばう)やぶれかぶれの狂気となりぬ
むざうさに母喰鳥(ふくろふ)の首ひきちぎり少年は開(あ)く夜のとばりを
惣闇(つつやみ)に吊り上げられてデパ地下ゆ七階 < 初夏の北海道フェア > へ
罧(しのづけ)の罪人のごと携帯電話(ケータイ)は和式便器に没したりけり
奈良墨を磨るぬばたまの硯海に消えたし葦鹿(あしか)、鯨(いさな)を連れて
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小文・近ごろみた夢
子供時分に嫌々行っていた床屋
の大鏡の前になぜか裃を着て腰掛
けている。「御主人、いよいよ今
日が最後の散髪ですな」床屋のお
やじがおもむろに口を開き、満面
の笑みでクッピーラムネをくれた。
髪型が思い出せない。