丹念に紐を巻きつけゆくことを楽しむ独楽を回すことより  鶴田伊津



歌人会員2欄にただ一度勝野かをりの名のありしこと  大橋弘



絨毯につまさき半ばしずませて素足に聞けり冬の訃報を  阿部久美



観覧車きしみ激しくとも回れ自業自得の地に降りるまで  八木博信



耳聞こえなくとも頭蓋の闇に渦巻ける蝸牛の浜崎あゆみ  八木博信



魔法とは思わざれども快美なるますだおかだのおかだの笑顔  藤原龍一郎



ふと浮かび笑ってしまうくやしさよ松浪健四郎の洗髪  廣西昌也



出荷停止の判定ののち窓に見る日照雨(そばへ)の空の夕のあかるさ  吉浦玲子



恥かしや<COOPはづかし>正しくは「羽束師」なるを初めて知りぬ  西台恵



白鳥の群れを容れゐる湖に白内障のごとき薄氷(うすらひ)  倉益敬



のりごろの波ありありてサーファーの乗る乗る立つ立つ次から次と  永田吉



「待ってるよ」「今、どこ」「先に行っているよ」消すために読む古いメールを  高野裕子



杭の上にとまりてゐたる川鵜はも行くうたかたよ行く夕暮れよ  小池光