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海草のやうになりたる雨合羽つとめ終へたる手足より剥ぐ 平居久仁子
雨後の道かほもこころも上向きて四月の空を桜とあゆむ 洞口千恵
つぶやいてみれば魔除けの経のやう晴耕雨読、せいかううどく 大越泉
いつか未来、老いたあなたが流すだろう涙ひと粒この指で拭く 谷口はるか
野に遊び身に付けて来し花の香に睡魔ふはふは近づけずゐる 原八重子
この春も風のどこかが不自由さうビニールハウスの波が荒らぶる 林とく子
目隠しをしたまま暮れてしまいたる子供のごとしヤマボウシの花 守谷茂泰
言はせたい人には言はせておけばいい海馬は脚を骨折したのだ 矢野佳津
たまらなく自由がほしいそんな日は地球儀の海に指触れてみる 槙村容子
あいねくらいねなはとむじいくストレスが少ない牛の出した乳飲む 斉藤斎藤
眠りより醒めてむさぼり食みし枇杷 子を産みし朝のひかりの中に 下村由美子
(2008.9.27.記)