春のねこ若草の上にすわりいてしっぽの先まで春のねこなり  田平子



「鬼は外」撒いても届かぬ吾の傍に鬼は近づき両手広げる  佐野良子



こと切れし病者に義歯をはめやれば張りの豊けき仏となりぬ  松岡建造



マニキュアの瓶ならべればつぎつぎに極楽鳥となって飛びたつ  今井ゆきこ



二歳児がはじめて描きし母さんの顔より足と手が伸びており  藤間明世



「訴」といふは「逆方向に切り込みを入れる」と電子辞書のたまひき  勺禰子


             
                                                    (2009.4.27.記)