牛乳にひたる苺に少女期の母がゐたるとおもへば哀し


線香の煙ただよひ夕卓の湯気にまじれば母は老いゆく


母のない子どものやうに旅立ちてしまひき清水由貴子ひとりで 


神憑(かみがか)るさまに酔ひたる素裸のをとこ叫べば帝都震へる


草食系男子のコンビニ店員がレジ打ちゐたりアルパカ面(づら)


受け取つてしまつたレシートすぐに捨つ連れ子殺めし実母のごとく


浴室の蛇口の水はキッチンの蛇口の水よりなにゆゑうまい  伊波虎英