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歌人は雲の彼方に棲んでゐて出くはすときは妙なをばさん 矢野佳津
はるかなる石器にきみは選ばれて一万年後の青年となる 津和歌子
逝きし友が夢に現はれ華麗なる大車輪を見せてくれたり 助川とし子
何ものにも触れずに落つる初雪の全き淋しさわが指に受く 吉川真実
看護師は髪をきりりと結ぶべし耳もおでこもしつかり出して 高山路爛
針が振れ、振り切れるまでに母の手が突き落とすべき子を見つけてしまう 猪幸絵
葉を落とし少し痩せたる祖母のごと「お帰り」というふるさとの山 森谷彰
しわしわの紙幣の如き顔のひとさくらの根方で煙草くゆらす 栗林菊枝
落葉積むひかりのみちをかすかにも身は透きゆきて森を歩めり 宮岡陽子
落葉踏むわれの足音聞きつけて水鳥は逃げ鯉は寄り来る 柊明日香
水餃子つるりと食めばみづどりのごとくに伸びるわれののみどは 洞口千恵
ゐのこづちつけて帰りし哲ちやんのズボンはたけどはたけどズボン 近藤かすみ
<神様はいなくてもよい神無月>嬶(かみ)さんだけは居らねばこまる 上原元
飼い主に飛びつく犬に成り下がりそうでケイタイいじりつつ待つ 大橋麻衣子
懐かしむ気持ちではなく好きだから歌いし二十年前の曲 高山雪恵