星は今しんと冴えをり独り居(ゐ)の一口焜炉の青き炎(ひ)に似て  岡田悠束



虫の音に目を閉じており夜に鳴くひとつひとつを孤島と思い  守谷茂泰



みづうみにしづめし斧の物語 こころ貧しくあれば思へり  原田千万



鬱の日も鬱晴るる日もさりながらかたはらに置く守一の猫  春畑茜



レスラーに教える歌詞の君が代の苔むす後の静寂までを  八木博信



桂銀淑何処へ消えしか冬の夜のモカ・コーヒーに苦き口腔  藤原龍一郎



暗がりに見たくないものを押しやって今年の冬も電飾の町  猪幸絵



ただひとりバナナ食ふときわが父はどんな顔して食つたのだらう  真木勉



吾妻橋スカイツリーを撮るひとらみな縦位置にスマホをかざす  井上洋



一章ずつ読みゆく本が六日後に終章となるときめきに寝る  加藤隆枝



校庭にうず巻く風はたちまちに枯葉を小鳥に変えて踊らす  高山美子