2005-01-01から1年間の記事一覧

指先がゑがく螺旋にまどはされ蜻蛉(あきつ)のやうに恋におちたり 高澤志帆 すれちがふ。なべてちがふといふことをおもひしるためたしかむること 花笠海月 金を請う手紙に才の煌きて啄木体重四十四キロ 森澤真理 極まれる暑さを吊りて起重機は雲の峰より高…

恋人が赤くただれて黒焦げて棒となること単純なこと 谷村はるか ボッティチェリの「ヴィーナスの誕生」金髪の先の先まで描かれてあり 楠藤さち子 片扉失せしままなる山門に直と続けり濃あぢさゐの毬 安達広子 次の世に伝へたき想ひを床並べ夜更けに語る十四…

頭陀袋を木かげにかけて口ゆがめ哭く老いひとも見ゆる涅槃図 梅田由紀子 ダブルプレーもなかなかならぬ県大会二回戦あたりを寝て観るがよし 久保寛容 友人の癌のことまでネタにする常連投書家四十一歳 白山太郎 みづみづしき胡瓜、茗荷を置きゆきし友の足音…

<ログ122>◆093:ナイフ 市川 周 2005年09月25日 (日) 21時34分 ナイフもてマ●コの形(かた)を彫りしより首吊る人のなき桜の樹 ◆090:薔薇 五十嵐きよみ 2005年09月25日 (日) 23時00分 淋しさにふれてきた手ですり減らす薔薇のかたちをした石鹸を <ログ…

(だいさうげん) > とふモンゴル人力士幕下に居(を)ればわが歌そこより生まる 敷島のやまとごころのささくれのガードレールに気付かずゐたりき 自転車で突つ込んでくる大阪のオバチャン自爆テロリストなりや 自爆テロリストのやうにゆかざるをディスカバ…

<ログ120>◆081:洗濯 櫂未知子 2005年09月21日 (水) 02時50分 いまだ見ぬ腸を洗濯するためにこんにやくを買ふしらたきを買ふ ◆089:巻 櫂未知子 2005年09月21日 (水) 02時57分 海苔巻の端を愛する者達の結社作らう部屋を作らう ◆096:留守 矢野佳津 2005年…

<ログ118>◆009:眠 篠原となみ 2005年09月18日 (日) 01時36分 眠りにも値段がついているらしい深夜の消費示すレシート ◆059:十字 青井なつき 2005年09月18日 (日) 06時30分 右折しか許しはしない十字路の真中(まなか)のようにうつくしい秋 ◆038:横浜 …

<ログ115>◆023:うさぎ 水野 華也子 2005年09月11日 (日) 16時02分 角曲がり逃げてゆきたる白うさぎ いいえ野分のコンビニ袋 ◆025:泳 水野 華也子 2005年09月11日 (日) 16時06分 投票所ファミレス病院広ければどこでも泳ぐ子ら腹這いに ◆099:動 水須ゆき…

<ログ112>◆070:曲 花鳥 佰 2005年09月05日 (月) 21時56分 髪あらふ少女の頸の曲線にマリーアントワネットのふたり子おもふ ◆080:書 近藤かすみ 2005年09月05日 (月) 22時38分 朱の印を捺し書面もて届けねばならぬ大変しばらくはなし <ログ113>◆099…

◆「ふやけて黒し」 正しくは「きじつぜんとうへう」といふ期日前投票(きじつまへとうへう)に行きぬ台風一過 栞(すなはち投票済証)をポケットに挿せば書肆へと運ばる足は 凭りかかる君もピアノもない部屋にラヴソングただ空しく流る 候補者のウソや本音を…

<ログ105>◆066:消 佐藤理江 2005年08月18日 (木) 22時21分 消滅の順序紅茶の底にある薔薇の形の砂糖が崩れ <ログ106>◆070:曲 高澤志帆 2005年08月21日 (日) 08時40分 8月、熱 逃げ水を追ひてそのさき曲がり角だれか立ちたる影ながく伸ぶ <ログ1…

みづ溜りのやうなる影を張りつけて沖縄人(うちなんちゆ)の歩む日盛り ひとりでは海を渡れぬ死者のため石に魂(まぶい)を移すと言ひぬ 渡英子 風景の殺されている地下街にかすかにうごくセロハンの鷗 生沼義朗 鳩えらく男いやしく電線に鳩ゐて下を男歩めり…

プリズムの断面にいるここちして夏至の陽の射す朝を歩めり 守谷茂泰 いつもいつもワインドアップの野茂のごと腋をさらして立ちたき銀河 高澤志帆 氷屋のくらきところにつつしみて切らるる時を待つおほごほり 花笠海月 ジル・ド・レの青き髯さへじりじりと焦…

七歳のうでまつすぐに挙げられてちひさきゆびもあがりたりけり 矢嶋博士 古き社に続く細道自転車が自動車(くるま)従えゆるゆると行く 山田幸江 夕暮れの路地にまつ赤な櫛拾ふつくづく永井陽子の心地 助川とし子 うつすらと頬の生毛をひからせて少女が盆に…

亀鳴くという季語淋しめば路地に蹴るサッカーボーイも暮れてゆくなり 久保寛容 早おくりのヴィデオに講師あはれあはれキャバレー呼び込みのごとき身振り手振り 花鳥佰 天気雨ふりたる白昼(まひる)スーパーの鮮魚売場のきらめきてみゆ 松野欣幸 馴染まずに…

R300のカーヴをなぞりつつ試運転車の厳かにゆく 梅雨の入りまぢかき空ゆ額(ぬか)を射る光 短歌よさもあらばあれ (塚本邦雄氏昇天) 石走(いはばし)るあふみを思(も)へば戦ぎたつ城築かるるまへのさみどり 猜疑心を洗濯ばさみに銜へさせ乾梅雨空にはた…

<ログ103>◆017:陸 井上佳香 2005年08月11日 (木) 13時15分 1トンの鉄が着地をせしときに陸(くが)は煙をたてて怒りぬ ◆017:陸 矢野佳津 2005年08月11日 (木) 16時02分 恐竜の背中のごとくゆれながら天王寺駅前の陸橋 ◆019:アラビア 矢野佳津 2005年08…

<ログ100>◆060:影 篠田 美也 2005年08月01日 (月) 22時26分 逃げ水の向かうはつかにほほゑみて影を失くせし杉浦日向子 <ログ101>◆057:制服 萩原留衣 2005年08月06日 (土) 08時24分 メルカトル図法で描かれた地球みたい制服姿の私の写真 ◆049:ワイ…

漬物石に似たる平たき墓の前孫ら並びて小さき掌合はす 志田節子 さざ波が植田にたちて煌めいて白鷺の足ゆっくり動く 桂はいり くず入れに今日の新聞捨てられていて九州の梅雨を伝える 森直幹 滾る湯に白玉団子しずしずと落とせばしずしず浮かびくるなり 水田…

あふれだすまえに蒸発させられて職場にはただ熱だけ残る 猪幸絵 肉体の辺境(マージナル)である足ゆびのひとつひとつを愛撫する初夏 有沢螢 ひとのゐない夜のロビーにあるものは背中合はせの椅子のかたまり 蔵本かつ枝 様々な社会のひずみ一身に負いてレッ…

<ログ97>◆063:鬼 浦好 2005年07月25日 (月) 19時25分 在りそうと思いし般若心経に鬼という字の一つとてなし <ログ98>◆008:鞄 大辻隆弘 2005年07月27日 (水) 00時51分 丹念に鞄をみがきゐし父よ或いはかろき断念として ◆087:計画 飛鳥川いるか 2005年…

かくれんぼの鬼はこぬまま盗汗(たうかん)にぬれてこどもはおしいれに消ゆ 高澤志帆 また一棟びょうぶみたいなマンションが現われ街の風を遮る 岩本喜代子 ウエストに合はせてサイズを決めたれば殿中でござるといふ体になる 冬野由布 水のなかにふたつのグ…

ああこれが訛りて降れる月光か夜の日向のホームに仰ぐ 渡英子 天上に文書く人の筆の音聞こえるやうなはつなつの川 藤本喜久恵 樹々の闇くろぐろとして蛍よりまずこの闇に会いに来たのだ 岩下静香 人群の疎らにしあらばその孤独増しまさんものをゴッホ自画像 …

◆「竜宮の楽器」天野慶 ファーブルが虫を見ているときの目を想う 狂気はそのちょっと先 (裏庭に井戸があったら)掘る気力なくてスイスの水に潤う ◆「人体模型」内山晶太 目に蓋のある人体のかなしさを乗せしみじみと終電車ゆく つややかに人体模型立ちてお…

大工町寺町米町仏町合併ののち卒都婆市となりぬ ラーメンを啜る寺山修司(しうじ)に似るひとの湯気の向かうにみるみる老けて ああ落暉 店鎖時(みせさしどき)の死語なれる街をさまよふ老母さがさな 岩か島か岩下志麻か沖ノ鳥島ビバ!サンバ!オーレ!オレ…

<ログ94>◆022:弓 長谷川と茂古 2005年07月13日 (水) 08時41分 会談に弓引き絞るごとライス米国務長官は足を組みけり <ログ95>◆033:魚 岡村知昭 2005年07月16日 (土) 22時10分 名古屋城天守閣にてたったいま熱帯魚より淋しくなりぬ ◆037:汗 岡村知昭 …

☆ 091:暖 伊波虎英 2005年07月09日 (土) 01時48分 夏の午睡、藺草莚(ゐぐさマット)のひんやりがテロの悒鬱で暖かくなる ☆ 092:届 伊波虎英 2005年07月10日 (日) 15時51分 逆巻けるアラビア文字(もんじ) 翻訳のしらべをもちて届く意志はも ☆ 093:ナイフ …

<ログ92>◆069:花束 三宅やよい 2005年07月05日 (火) 19時58分 終電に百合の花束置き忘れようやく終る父の長き日 ◆044:香 久哲 2005年07月05日 (火) 23時45分 成金になるのはおよしおまえなら盤の外まで行けるよ香車 ◆046:泥 和良珠子 2005年07月08日 (金…

ベルジム(白耳義)は元気?トルコ(土耳古)はぼくに似てさみしがりやの茶色いうさぎ 夏のアスファルト道路にまんまるくやがて生まれてくるひとの影 *武田ますみさん主宰 http://mypage.odn.ne.jp/home/erimana0508 *テーマ「口語(発想)の歌」(参加者…

山椒の若葉つむとき山椒はかなしいまでに山椒の香で 桂はいり 歯磨き粉少な目にしてしぼり切る勇気などない今日を始める 森直幹 芸よりも日本語の上手さに感激す大道芸の外国人よ 青柳令子 うしろむく回転椅子の背もたれがおそろしく見ゆひとりの部屋に 岩粼…